*** 創作シナリオとエッセイの小部屋 ***

団欒の中心にテレビがあった

我が家に初めてテレビがやってきたのは、確か、私が小学校1年生の頃、1960年代前半のことである。(年がしっかりばれてしまうが……)
当時、テレビがある家は、まだまだ珍しかったのだろう。
電気屋さん(懐かしい響きである)がテレビを取り付けているところに、ご近所さんたちが入れ替わり立ち替わり、見学に来たのを覚えている。

父親の仕事が不安定で、給食費もまともに払えないような経済状態だった我が家でなぜテレビが買えたのか?
今考えると実に不思議な話だが、当時、カード払いというシステムこそなかったものの、

日用品でも食品でも帳面につけておくだけで、お金は後から…

という実にいい加減な支払方法を、我が家では何にでも適用していたから、多分テレビもそんな購入方法をとったのではないだろうか。

とにかく、その後、我が家のテレビは、一家団欒の中心的存在として、長い間茶の間に君臨し続けた。

「食事の時間だから、テレビを消しなさい」

なんて言われるようになったのは相当後のことで、あの頃の我が家は、食事時になると、家族全員がテレビの前に集まり、
茶碗片手に一つの画面を見つめ、泣いたり笑ったりしていたのである。

あれから40年余りの年月が経ち、今、私は夫婦二人と猫一匹の生活を送っている。 
夫婦二人だけの生活だが、今の私は、夫と一緒にテレビを見るということがほとんどない。
私と夫のテレビの好みがまるきり違うということもあるが、ふと気付くと、同じ番組をそれぞれ別の部屋で見ていたりする。
(決して夫と私が不和状態、というわけではない…と、思うのだが…)
あの頃の14インチ・自黒テレビと比べると、はるかに画像が美しく、サイズもずっと大きくなったテレビだが、
人を引き寄せる力は、随分と小さくなってしまったようである。

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